花鎖に甘咬み




「……目的?」


こく、と頷く。

〈白〉がそれぞれの目的のために動いていることは、なんとなくわかった。それなら、純圭さんの目的はなんなのだろう。


何のために、真弓が必要だって思うんだろう。



「壊す」

「ふぇ……?」



ぎり、と純圭さんの手に力がこもる。
ほっぺたがさらに平たくつぶされて。



「〈薔薇区〉を破壊することだ。跡形もなく全部」

「……へ」

「こんなゴミみてえな街、なかったことになればいい」



純圭さんの薄く開いた唇から、ぽつり、空虚にこぼれ落ちた言葉は切実だった。はじめて、純圭さんの心に触れたような気がして。


思わず、純圭さんの氷海の瞳をじっと上目づかいに見つめると、純圭さんの目が苛立たしげに細まって、頬をはさんだ手がするりと輪郭をなぞってすべり落ちる。


────首もとまで。




「……っ、んぐっ」




首に、純圭さんの指がぐっと沈みこむ。

容赦ない力加減、喉がぎゅう、と締まる感覚に生理的に涙が浮かび上がる。


滲んだ視界の中の純圭さんは、無表情で。

命を握られている感覚に、ぞっと鳥肌が立った。



「……ぺらぺら話しすぎたか」

「……っ」

「お前の相手してると、どうでもいいことを思い出しそうになる」



小さくなにか、呟いた純圭さん。
手足を縛られているせいで、うまく抵抗ができない。


しだいに呼吸が苦しくなってくる。


チカチカ、と視界に星が散って、「これは駄目かも」と思ったその瞬間、ぱ、と突然手が離れた。