花鎖に甘咬み




「ちょ、純圭さ……」


慌てたように純圭さんを私から引き剥がそうとする青葉さんだけれど、片手で軽くあしらわれていた。

その奥で、ミユキさんも驚いて固まっている。


ふたりの反応に、頬をつぶされながら思う。
純圭さんが女嫌いだというのは、どうやら嘘ではないらしい。



────でも、その純圭さんの手が今、直に私の両頬に触れているのも事実だ。




「……蕁麻疹、出てねえな。女相手なのに、信じらんねえ」




青葉さんが、おののいたようにぽつり、呟く。
それから未確認生物でも見るかのように私の方を見てきた。



触れられたところからぬるい平熱が伝わってきて、純圭さんもちゃんと人間だ、と改めて思う。感情のないお人形みたいな顔をしているけれど。




「ひゃの、ひひひゃげんはなししぇくだしゃい……!」




頬を押しつぶされたまま、それでいて他になにもされることなく、純圭さんはじっとしている。



喋りにくいったらない。


どう頑張ってもふにゃふにゃになってしまう舌っ足らずの話し方で必死に抵抗するけれど、スルーされてしまって。


しばし、膠着状態が続く。



「……ひゃの」



あの、と口を開く。
純圭さんが反応して、私の顔をじっと見た。

そういえば、まだ、気になること、あった。



「しゅみかしゃんの、もくてき、って、にゃんでしゅか?」