花鎖に甘咬み



× × ×


ぐつぐつ音を立てているお鍋を監視しながら、真弓がシャワー室から出てくるのを待つ。

真弓がいないと、急に、静か。


コンクリートの部屋は無機質で、壁も床もつめたい感じで……つい心細くなってしまう。でも、本来なら、真弓はここでひとりで暮らしているんだよね。


寂しくないのかな……。



なんて、ひとりになっても結局真弓のことばかり考えていると。



────ガゴンッ。



「……!」



急に激しい物音が響く。

外へと続く隠し通路の方からだ。



「な、なに……?」



心臓の音がバクバクうるさくなる。

でも、音はそれっきりぴたりと止んで、気のせいだったんじゃないかって思うくらい、また静けさが戻ってきた。


でも、落ちつかない。
ザワザワと嫌な予感がする。




「はやく、真弓、戻ってこないかな……」




コンロの前で三角座りをして、ぎゅっと膝を握っていると、また。

ドンッ、ガンッ、と不穏な金属音が響いた。今度は連続で。

……やっぱり、通路の方だ。