「はい、やり直し」
「ええ、厳しい……!」
ぶうぶう文句を言いながら、まな板と包丁に向き合う。
料理をしたことがない、わけじゃない。白百合でも家庭科の授業はあって、調理実習でお味噌汁を作るくらいのことをしたことはあるの。
でも、包丁に慣れていないのは事実だ。
まな板に横たわるブロッコリーに、バコンッと包丁をつき立てると。
「おい」
後ろから真弓の腕が伸びてくる。
びっくりしてのけぞった。
「ひえっ……! な、なに?」
「んな危ねえ切り方すんな」
「あぶない……?」
きょとんとすると、真弓はこめかみを押さえて「はー……」と息をついた。そして、真弓の大きな手のひらが私の手に重なる。
「包丁の持ち方はこう」
「こう?」
「ん。で、左手は指出すな」
「ゆび……」
「猫の手だ」
おおお……。
なんか、それっぽい。
さっきよりも切りやすくて、繋がっていたブロッコリーがようやくバラバラになってくれた。
「見て! 切れた!」
嬉しくてぴょんと跳ねる私を、真弓が後ろから心配そうに見守っている。
なにをそんなに不安そうにしているのか聞いてみると「いつお前の指が切り離されねえかヒヤヒヤしてんだよ」と返ってきた。



