花鎖に甘咬み



× × ×



「真弓の切り方、なんかすごく野性味あふれてる……」

「いーんだよ、雑なくらいで。煮込んだら多少溶けるだろ」

「ええっ! 野菜って溶けるの!?」

「……たぶんちとせが想像してる “溶ける” とは違うけどな」



真弓がほんとうに料理ができるのか、ということについて正直いうとキッチンに立つまで私はいささか疑問に思っていたのだけれど、どうやら、真弓はほんとうに料理ができるらしい。


手際よくシチューを煮込む準備ができていく。

野菜の切り方がやけに雑で大ざっぱなところ意外は完ぺきだ。

にんじんなんて岩みたいにゴツゴツでこんなの口に入らないって思うけど、真弓いわく溶けるらしいので無問題(モウマンタイ)



「つか、お前こそだろ」

「なにが?」

「包丁の使い方、ヘタすぎ」

「〜〜っ! ヘタじゃないもん! 普通よりちょっと、ちょーっと苦手なだけだから!」

「それをヘタって言うんだよ。ほら、コレとか見ろよ、すげえ繋がってる」



切ったはずが切れてなくてなぜかバラバラになる寸前で繋がっているブロッコリーを見せてくる。こうしてみると、前衛的なアートみたいな仕上がりだ。


おかしいな、ちゃんと切ったんだけどなあ。