花鎖に甘咬み




まじまじと手のひらを見つめてしまう。

関節のところが骨ばってごつごつしていて、それなのに指先はすうっと長くて、キレー……じゃなくて。




「えと、たす……」




助けてやる、って言った、よね?


助けてくれるということは、私をここじゃない、どこか安全なところへ連れて行ってくれるということだろうか。



それはとっても魅力的な提案だった。

なにしろ私はここがどこかもイマイチよくわからなくて……とにかく、途方に暮れているんだもん。



────でも。




「……っ」




少し離れたところで転がったままのフード男たちを見て、足がすくんだ。



だって、このひとたちをひとりで片付けてしまった。武器をもつ複数を相手にして、生身の、たったひとりで。……それって、そうとう、強いってこと。



強いってことは────それと同じくらい “キケン” ってこと。





「なに突っ立ってんだ、置いてくぞ」





助けてもらったのだとしても、それだけで、このひとを信じていい理由になんか、ならない。

この手を掴んだとたん、取って食われる、なんてこともじゅうぶんありえる。



それに。

幼いころからおとなたちに耳にたこができるほど言い聞かせられたことを思い出す。




「あ、あの……、私」

「どーした」


「っ、行きませんっ! 助けてくださったのは、ありがとうございました、っ、でも」

「でも?」


「知らない人には着いて行っちゃ、だめ、なので!」