花鎖に甘咬み




息をのむ。



漆黒の艶やかな双眸がこちらをじっと見据えていた。すうっと縦に長い体躯、何頭身あるんだろう、なんてふと考えてしまう。




────そして、その、おそろしく整った相貌。



陶器のツクリモノかと思ってしまうほどの肌に、切れ長の瞳、その上に影をつくる睫毛。さらりと狙ったようなタイミングで落ちてくる黒髪も含めて、すべてが、完璧だった。





「……か、格好いいですね……」

「ハア?」


「っ、や、えっと、助けていただき、誠にありがとうございました……っ」




助けて、もらった、んだよね……?



地面にぐったりと伸びているフードの男たち。ぎりぎり両手で数えられるほどのこの人数を、このひと、ひとりで……。



そう思うと、ぞくり、と背中を何かが駆け上がる。




「女」

「っ、はい」


「歳は?」

「16、です」


「────ここじゃあ、見ねえ顔してんな。〈外〉の女が迷いこんだか」

「へ」


「いかにも育ちよさそーな面してんだよ、お前。そういう奴、ここにはいねえんだわ」




そと……。


さっき、フードの男たちもそんなことを言っていた、ような。外、ということは、中もあるのだろうか。そもそもここは……。


きょときょとと瞬きを繰り返していると。




「女」

「っ、ひぁっ」




また突然呼びかけられて、緊張のあまり声がひっくり返る。へんな声を上げたことが恥ずかしくて仕方ないけれど、そんな私の様子にはぴくりとも反応せず。


ポーカーフェイスを崩さないまま、そのひとは手のひらを差し出した。




「来いよ」

「え、っ」

「助けてやる」