花鎖に甘咬み




冷や汗が、つう、と背中を伝う。
〈黒〉の人、ってことだよね。



〈黒〉は暴徒化した治安部隊、〈外〉からの侵入者────つまり、私には容赦しないって……。



一瞬のうちに悪い想像が頭のなかをぐるり巡る。


思わず、握手した手を引っ込めようとしたけれど、それを許さなかったのは伊織さんだった。引こうとした手をぐっと力をこめて引き寄せられて、抗えない。



「安心していいよ。俺は、今のところ、ちぃちゃんをどうこうするつもりはないからね」

「……っ、でも、〈黒〉 なんですよねっ?!」

「たしかに俺は黒薔薇(ブラックローズ)だけど、他のヤツらとは根本的に “あり方” が違うから。みすみす政府の犬になるつもりはないよ。俺は俺の意志で動く」



それでも、どうしたって頭をよぎるのは、昨晩突きつけられた黒光りする銃口だ。




「そんなこと言われたって、私、信じられないです。口ではなんとだって言えるじゃないですか……っ!」

「まあ、それも仕方ないよね。〈黒〉はとりわけ洗脳されたヤツが多いから」




肩をすくめて、伊織さんは真弓にちらりと視線を流した。

軽く息をついた真弓が、なだめるように私の肩に触れる。




「伊織のことは、信じていい」

「……っ」

「つうか、万が一のことがあっても、コイツは俺に勝てないしな。かすり傷一つ、お前に付けさせやしねーよ」




真弓がそう言うなら……なんて。
納得してしまう私がいる。



疑惑は捨てきれないまま、それでも、伊織さんの目から逃げずに見つめ返すと。