花鎖に甘咬み



こんな風にあだ名を付けられるのははじめて。

戸惑いを隠せずに、目をぱちくりさせていると、伊織さんの手のひらが目の前に伸びてきた。



「マユと一緒にいるなら、俺に会う機会もこれから増えるだろうし」

「そう、なんですか?」

「あれ、マユから聞いてない? 俺、マユの相棒」

「相棒だと思ったことはねえよ」



すかさず真弓が口を挟む。
けれど……、仲が良いのは事実みたいだ。


真弓がここに来ようと言いだしたのも、伊織さんに会うためで間違いないはず。


真弓が信頼しているひとなら……私も、信頼できる。



差し出された手をぎゅっと握る。

ぶんぶんと上下に振って握手すると、その勢いで伊織さんのシャツの袖が捲りあがった。



「……え」



息を、呑む。

捲りあがった袖口から覗く伊織さんの手首に、刻まれていた薔薇の紋章は、全く予想外の色をしていた。




「……黒、薔薇?」