花鎖に甘咬み



真弓の低い声。
そして、目の前に色濃く影が落ちた。


見れば、伊織さんから遮る壁みたく、真弓が立ちはだかっている。

まるで伊織さんから私を隠すような動作に、私のほうが面食らっておろおろしていると。



「ぅ、わっ!」



とつぜん、真弓に頭を抱え込まれる。

そして、その状態のまま真弓は伊織さんに向かって口を開いて。



「こいつのことじろじろ見んな、減る」

「……」



真弓の言葉に、一瞬絶句した伊織さんは、その次の瞬間信じられないものでも見たかのように目を見開く。



「マユ、変なものでも食べた?」

「食ってねえよ」

「うわ、マジで素でそれなの? 過保護おばけじゃん」



真弓にがっしりホールドされている私に、伊織さんはくつくつと喉を鳴らして笑う。



「あーあ、ちとせちゃ……きみも可哀想にねえ。よりによって〈猛獣〉のお気に入りとか。苦労すんねー」

「えと……」

「てか、いちいち “きみ” って言い直すのそろそろ面倒。ちとせ……ちとせが駄目なら……“ちぃちゃん” ?」



ぶつぶつ呟いたかと思えば、伊織さんはにっこり微笑む。



「ちぃちゃん、改めてよろしくね」

「へっ?!」

「いいでしょ、ニックネーム」