花鎖に甘咬み



「そもそもマユがオンナノコを隣に連れてることが異常事態なんだけどね」

「そう、なんですか?」

「うん。もともと〈薔薇区〉の女人口が少ないってことを抜きにしても、マユはオンナノコとの間の線引きはしっかりしてる。きみもわかるんじゃない? マユがオンナに興味あるようには見えないでしょ、どう考えても」


と、言われましても。

たしかに真弓が女の子と距離を縮めるようなタイプには見えないけれど、でも、そんなのわからない。私以外の女の子といるときの真弓を知らないんだもん。



「つか、俺的にもっとびっくりなのが、わざわざちとせちゃ……きみのことを、ここまで連れてきたことだよね。あのマユが」

「へっ?」

「俺に紹介しにきたってこと。あのマユが、オンナノコをねえ……。紹介っていうより、見せびらかしにきたってとこかな。ね、マユ」

「ああ」



真弓が短く答えると、伊織さんがぴくりと片眉を上げる。




「へえ。本気でこの子のこと、隣に置く気なんだ?」

「ああ」

「ふーん。ほんと、珍しいね」



カウンターに頬杖をついた伊織さんは、私のことをじーっと見つめる。観察するかのように、頭のてっぺんから、ゆっくりと視線でなぞられる。



「マユのお気に入りって言われると俄然興味湧くかも。きみ、どんな風にマユを転がしたの? 俺も一度くらいはお相手願いたいな」



柔和な表情が、一瞬にして夜の色香をまとう。

明らかに含みのある伊織さんの言葉に、戸惑っておろおろしていると。




「伊織」