「噛みつき……グセ?」
「そ。マユの癖なんだよね、昔から。誰でも……ってわけじゃないけど、ふとしたときにがぶりと平気でいくから、それで〈猛獣〉って誰かが言い始めた」
クセ、だったの……?
ていうか、そんなクセってあるの……?
怪訝な顔をしていると、伊織さんがにっこり目を細める。
さっきから気になっていたけれど、伊織さんの笑顔って、一見朗らかに見えるのに、どこか作られた仮面のようだ。
「俺もたまに噛まれるしね。見る?」
「へっ?」
「ほら、コレ。もう消えかけだけど」
何のためらいもなく、シャツのボタンを外した伊織さんが、左肩をぐいとはだけさせる。のぞいた、肩にはたしかに半円形の痕が残っていた。
さっき鏡越しに確認した、私の首もとのものと、同じ。
「だから、別に、珍しいことじゃないんだけど」
「けど……?」
「オンナノコ相手に、は初めて見た」
伊織さんの目が探るように細まる。
見えるはずのない心のなかまで読まれそうな危うさを感じた。



