花鎖に甘咬み



鋭く冷えた声が、私と伊織さんを遮る。

え、と驚いてその声の主────真弓の方をぱっと見上げれば、なぜか、そこには仏頂面の真弓がいた。



ええ……?
なんで不機嫌なの……?



傍から見ているだけでわかるほどの不機嫌オーラに戸惑っていると、伊織さんが眉をぴくりと上げる。




「えー、これは俺とちとせちゃんの話じゃんか。マユには関係ないよね」

「“ちとせ” って呼ぶのは俺だけでいいんだよ」

「……うわー、ふつうに理不尽じゃん。それに、俺だけ “で” じゃなくて俺だけ “が” の間違いでしょ、ソレ」



目を見開いた伊織さんは、ちらりと視線を流す。真弓と私の、繋がった手の方へ。

それで、感心したように。



「珍しいね」

「なにが、ですか……?」



首を傾げると、伊織さんはにこっと笑う。



「マユが、オンナノコに対してこういうことすんの、はじめて見た」

「へ……?」

「つか、すげえ見せつけてくんじゃん。それ、マユでしょ?」



自らの首すじをとんとん、と示しながら私を見つめてくる。


伊織さんが言いたいことがまったくわからない。

ぽかん、と口を開けて固まっていると。




「まさか、気づいてない? ちとせちゃん……って呼んだらだめなんだった、きみのココ、豪快に痕ついてるんだけど」