「もう一度、念の為に聞きますが、能力者には反応してはいないのですよね?」


「うん、まったく」


あれ以来、能力者にもしるしは反応しなくなった。

あの闘いの時と比べたら、しるしの力はかなり弱い。

目が覚めてからあたしの力を借りたいと、ドイツやイギリスの組織が何度か協力を頼んできたけど、今のあたしの状態を見てすぐに諦めたようだった。


「何かあればすぐにわたしに言って下さい。どんな些細な事でも構いませんので」


「……うん」


若干強くも感じられる口調に、あたしはじっと一樹を見つめる。


「……何か?」


暗がりの中、輪郭が少し傾いた。


「あ〜、だってすごく聞いてくるから。前もいろいろ聞いてはきたけど、今の方が聞こう聞こうとしてる気がする」


「…………」


一樹は少し沈黙する。


「……もう、あの時のような後悔はしたくないのですよ……」


声を弱めてあたしに言った。


「……え?」


「あの時、わたしがもう少し気を配っていれば……

あなたの身に起こっていたさまざまな異変にも気付けていたでしょうし、何かしら対策も出来たはずです。

過ぎた事を言っても仕方がないのは分かっていますが、もう二度とあのような過ちを、見過ごしたりなどはしたくないのです」


「……?」


「あなたには幸せになってもらいたいのです。 その為にわたしが出来る事があるのなら何でも力になりましょう……」


最後はふわり、笑った気配を感じ取る。


「……うん」


取りあえず、あたしはコクンと頷いた。