「……なに? もしかして……ずっと付いて来てたの?」


「ごめんなさい、でもっ!」


少女は強い眼差しを湧人に向けた。


「私、外見だけで橘くんを好きになったんじゃないです! だって知ってるもん! 冷たそうにしてるけど橘くん本当は優しい人だって! だって見たから! 橘くんが転んだ子供助けてあげたり、お婆さんに道教えてあげたり、落とし物を拾って届けたりしてるとこ! ずっとずっと見てたから……だから外見だけで好きになったんじゃないんですっ!」


まくし立てられ湧人は呆気にとられてしまう。


「……あっ、ごめんなさい!」


恥ずかしそうにうつむく少女に、湧人はやれやれと息を吐く。

ため息の後、美空と交わしたいつかの約束を思い出した。


「……そうだね。ちゃんと見て、聞かなきゃ……何でも決め付けるのは良くないよね」


「……えっ?」


「別に。 ……それより君、家どこ? もう暗いし、途中まで送っていくよ」


「……っ、 ……ええええ〜っ⁉︎」


予想外の言葉に少女は思わず絶叫する。


「ほら、行くよ」


「……はっ、はいいい〜〜っ!!」


颯爽と歩く湧人の後ろを少女はアタフタしながら付いていった。


——幸せに……


先ほどの問いかけはまだ胸にある。

だが、少しだけ、湧人は外に目を向け始めた。