「……へえ……」


あたしはまた湧人から目が離せない。

湧人もあたしから目を離さない。


「「…………」」


まるでお互いが磁石になったようにじーっと見つめ合ったまま……


「……本当に、そのままだね……」


沈黙の後、湧人がそっと口を開いた。


「……え?」


「何も変わらない。あの時のままの美空だ……」


「……あ〜、うん。 湧人は……ずいぶん変わったね」


「……え、」


「背、前はあたしの方が大きかったのに」


改めて目の前の湧人を確認する。

前は湧人があたしを見上げていたのに、今はあたしが湧人を見上げている。

湧人はだいぶ身長が伸びていた。


「そりゃあ、五年も経てば……」


「他にもいろいろ。 顔も、 声も、 なんか雰囲気も」


「……そう、かな?」


「うん、年も。 湧人は高校二年生? いつの間に、あたしより上になったんだ……」


「……そっか。 オレ、今は美空の先輩に……」


もうだいぶ落ち着いたような雰囲気……

もうとっくに五時間目の授業の半分が過ぎているけど、それよりも……


「ねえ、さっきどうしてあたしって分かったの? 髪も目も黒かったのに」


湧人と話したい気持ちの方が先にきて……


「前にウィッグ着けてたの覚えてるし。それで……」


「あ、そっか。そういえばそうだった」


「三日前、中庭で見かけてびっくりしたよ……横顔だけだったけど、まさかって思ってさ……」


「……三日前? ……あ〜、カラス⁉︎」


「カラスと喋ってるのもびっくりしたけど、声も雰囲気もそっくりだったから……。 まさかそんなはずはないって思っても、それから毎日、中庭に行って探してて……」


「……そうだったんだ……。 あたし、あの時ね、カラスにタマゴ泥棒思われて——」


まるで五年の時を埋めるように、あたしたちは語り合った……