「……えっ⁉︎ えっ⁉︎ 王子がっ⁉︎ あの……思い出の⁉︎」
「橘くん⁉︎ ねえ橘くんってば! どうしたの⁉︎ そのコ誰⁉︎ 一体……」
グリムと少女が何か言ってるけど言葉が耳を素通りする。
「「……っ……」」
あたしと湧人だけが時を止めて、呆然と見つめ合っている……
……と、
「コラァーッ!」
「おまえっ!!」
「天使さんっ!」
凄まじい殺気がようやく意識と視線を引き離した。
……⁉︎ ……あっ、
見れば庭師のおじさん、生徒会長、風紀委員の女の子があたしを睨みつけながらズンズンこっちへ歩いてくる。
「またおめえかっ! せっかく育てたワシのコキアをこんちくしょうっ!」
「ナメた真似しやがって! こうなったら意地でもお前を手に入れる!」
「あなたっ! 三階から飛び降りるなんて一体どういうつもりなのっ!」
それぞれに怒りの言葉を吐きながらどんどんこっちへ迫ってくる……
「……っ、どうしようっ、グリム、あたし、」
「……わ、私に言われたって……」
すると、
「……美空? もしかして今……困ってる?」
うつむき加減に湧人があたしに聞いてきた。
「……え? ……ああ、うん。あたし、今、困ってる」
「そっか。 じゃあ、」
——グイ!
湧人があたしの手をつかむ。
「こっち! 来て!」
そのまま逃げるようにあたしを連れて走りだした。
「あっ、美空!」
「……橘くんっ⁉︎」
——ダダダダッ……!
風を切り、あたしと湧人は突っ走る。
繋がれた手、伝わる体温、風になびくブラウンの髪の毛……
……ああ、 湧人……
ろくでもなかった一日が一気に輝きだしてくる……
……湧人……
……湧人……!
……湧人っ……!!
急に世界がこんなにまぶしい。
目に映る全てのものが色鮮やかに見えていた。


