「……たく、迷惑な話だよな。 どこのどいつか知らないが……? キスは病気やケガが早く治って元気になるおまじないとか……適当なこと言いやがって」
「……っ、」
「おかげで問題が起きている……。 ケガや病気、元気のない奴を見るとあいつは疑いもせずキスをしようとするからな。そしてその逆も……
自分がケガをしたから相手はまじないのキスをしてくれたんだと思っている……」
「……っ⁉︎」
「だからあいつの中じゃ何一つ間違った事はしていない。 それでも、それが嫌だと言うのなら……」
「……?」
「嘘を吹き込んだ人間が、 本人があいつに言うしかない。 キスが本当はどんな意味があるのかを……
だから心当たりがあるならお前もそいつに言っとけ。 万が一、美空が戻ったら速攻訂正するようにとな。
そうしてくれないとこっちが困る……。 今はまだ被害は小さいが勘違いするバカな奴も出てくるだろうからな。 後で大問題にもなりかねない」
「……っ、」
「……じゃ、 オレはもう行くが……あまり自分を責めるなよ。 グリムが言うようにあいつが完全にお前の前から消えるとか……それは考えにくいからな」
そう言って佑影はオレに背を向ける。
一人屋上を立ち去った……
「…………」
オレは目を見開き呆然と宙を眺めている……
……ウソ、 だろ……
あんな昔に言ったこと、まだ信じて……
ショックに似た痛みが胸を叩いている。
同時に、冷静になれなかったオレの未熟さ加減に脳がガツンと打撃される……
「……っ、」
……オレのせいだ……
美空の事、なにも分かっていなかった……
責めるなと言われても自分を責めずにいられない。
「……ごめん、 美空……」
やり場のない悲しみが更に強くズキズキ胸に食い込んだ……