「……ハァ、」


机の上を片付けてオレはゆっくり教室を出る。

いつものように廊下で待ち伏せていた女子たちからは悲鳴があがり、絡みつく視線をかき分けながらオレは昇降口へと歩いていく……

校舎を出るとやっと息苦しさが軽減した。


「…………」


久しぶりに上を見上げる。
するとカラリと晴れた青空が瞬時に目に飛び込んでくる。


……あ、


たちまち淀んだ空気が一新された。

それまでの腫れ上がった脳内が急にしぼんで隙間ができ、本来の冷静な自分を呼び戻す……


『……湧人!』


ふいに今朝の美空が思い出された。


『……あたし、 ごめん……』


これまでも何度かオレに謝ってきた美空が、今日に限ってはやけに真剣に、神妙な顔で言ってきた。

それまではただ言葉を並べているだけの、取りあえずの謝罪にしか聞こえなかった美空の言葉……

なんでオレが怒っているのかも分かっていないような、遠ざけてもあっけらかんと普通に接してきた美空が、急に態度を変えて喋りかけてきたのだ。