「じゃあ、 昨日の事は?」


「……え?」


「なんでオレとキスしたの?」


痛々しくも見える儚い瞳……


「……えっと……」


混乱するあたしは急に頭が真っ白になって、うまく言葉を探せない……


「……それも、 かわいそう……だったから……?」


なんとなく出たそんな言葉に湧人の顔はこわばった。


「……なにそれ、 同情?」


「……?」


「美空はずっとオレをかわいそうな奴だと思ってたの? 片思いしてるオレが?」


今度は怒りの表情が混じる湧人にあたしはますます混乱する。


「……なに? 分からない。どうしたの湧人?」


……昨日はあたしがかわいそうじゃなかったの……?

ケガしたあたしをかわいそうって湧人が、 だから……


「…………」


「……ねえ、」


「もういい」


湧人がふいっと顔をそむけた。


「……ゆう、と?」


「……ハア、」


ため息の後、湧人は遠くに視線を向ける。


「……美空。 オレは美空が好きだよ。 ……けど、 今は顔も見たくない」


そう言うとそのまま歩いて行ってしまった。


「……湧人……?」


あたしは何も分からずに、

ただ小さくなっていく湧人の後ろ姿を見つめていた。