……そんな中、
「……ハア、」
湧人がため息を吐き捨てる。
「行こう、 美空」
そう言うとスッとあたしを抱き上げた。
「……えっ……」
心臓がドキッと跳ねあがる。
これってもしかして、グリムが憧れていると言っていた“お姫様だっこ”というやつだろうか……
「いいよ湧人。 自分で歩ける」
「だめだよ。 傷口が開くだろ」
「だって、今もさんざん走ってきたし」
「だめ。 今迎えの車も呼ぶから」
ちょっとムッとしたような湧人。
すると、
「待って橘くんっ!」
のぞみが湧人を引き止める。
「橘くんもそう思ってるの⁉︎ 私がウソをついてるって……」
「……さあ、」
湧人は冷めた視線をのぞみに向けた。
「けど、どうみてもこっちの方が重傷だし、キミは普通に歩けているし……?」
「……⁉︎」
「今、オレを引き止めようとして普通に追いかけてきたよね」
「……あっ、」
「じゃ、オレたち帰るから」
湧人はそこから歩きだす。
湧人の肩越し、のぞみは悔しそうにじっとこっちを見つめていた。


