「あのさぁ、 凌駕って、 いっぱい昔の女がいたんだね。 でも、本当に好きだったのは夢の中の結愛だけだった」
「……は、あ?」
「凌駕の特別。 あたしのとはちょっと違う。 結愛の時は一緒に寝ても怒らなかったし、凌駕の方が一緒に寝たかったみたいだし」
「……なっ、」
「かくしてもダメだよ。 あたしにはちゃんと分かるんだ。 だって……」
美空が右手を開いて俺に見せる。
「しるしがあたしに教えてくれる。 昔の事、凌駕と結愛の事。 二人は一緒にいるべきだって」
「……っ、」
そこには“五”の字に似た赤い印が浮かんでいた。
「そういえば……凌駕、 あたしと初めて会った時、 危険が危険でいっぱいだから関わるなって言ったよね」
「……⁉︎」
「何度もすごく真剣に、それがお前の為だって。 なんでだろうってあの時は思ったけど、その理由が今分かった。 結愛の事があったからなんだね」
「……っ、」
「あれから10年経ったけど、お互い気持ちは離れてない。 結愛はもちろん、凌駕も……
忘れたふりして抑え込んでるけど、今も結愛が好きなはず」
「……っ、」
「あの時とは違うよ。 結愛、強くなったんだ。 タイでムエタイの武者修行したんだって、だから」
「……は?」
「凌駕と一緒にいたいから、だから一人で頑張ったんだ。
もう10年前の守られるだけの女じゃない。
弱い自分を変えたくて、努力して、ちゃんと危険をやっつけられるように、強い女になったんだ」
「…………」
「行こう、凌駕。 結愛のところに」
差し出される右手。


