「……? おかしな事、 言ってないよ? 全部本当の事だもん。 ……あ、 本当の事じゃない。 足が速くて大変で、結局連れて来られなかった」
「……何を言っている」
「だから黒パーカー。 それ、 凌駕の昔の女なんだ」
「昔の女? そんなもの、 何人いると思っている。 一体いつの女なんだ」
「だから、さっきの夢の女だよ! 夢の結愛! 凌駕といっぱいキスしてた!」
「……っ、」
まさか、と鼓動が胸を打つ。
別に予想していなかった訳じゃない。
昨日の電話口での伝達、“昔の女”という言葉に、俺は思いつく限り関係のあった女の顔を思い浮かべた。
その中に確かに結愛もいたのだから。
……だが、 しかし……
「……お前、 何故……いや、 結愛は……」
俺はうろたえる。
固いパンドラの箱をいとも簡単に開けられた驚きと、 結愛が黒パーカーだと言い切る発言。
まだ全ての女を対象に疑いをかけていた現段階の俺にとって、 確信をついたかのような美空の話はそう簡単にはのみこめなかった。


