「誰かに何か言われた? もしかして風紀の子?」
「ううん、 風紀委員じゃないんだけど。 でも、 あたし本当に世間知らずで、 そんなルールがあるなんて知らなくて……」
「ルール?」
「だから今度からちゃんと言うね、橘先輩って——」
「——美空っ、」
湧人が急に語気を強めた。
「……?」
「違う! そのルール嘘だから!」
「……う、そ?」
「そう、嘘! そんなルールどこにもないし! だから今まで通り名前で呼んで?」
「……でも、」
「オレがそうして欲しいんだ。 ……嫌なんだ、急に壁作られたような……一気に遠くなった気がして……」
「……そう、なの?」
「うん。 だから、いつもみたいにオレを呼んで?」
「……分かった。 じゃあ、」
あたしはいったん言葉を区切る。
「湧人!」
改めて慣れた名前を口にした。
「……ん、 それでいい」
満足そうに微笑む湧人。
そんな湧人の唇にあたしは自然と目がいった……


