久美の声は私の罪悪感に増長させる。
「私ね、髪を染めたんだよ。ほら前にレイナが髪染めたほうがいいって言ってくれたからさ、思い切って茶髪にしたんだよ、あんまり派手じゃないけど。そしたらみんなが似合うって言ってくれるんだ」
久美は声を無理やりに明るくして言った。
「久美、あのさ」
「なに、どうしたの?」
「私は久美が思っている様な人間じゃないんだ」
頭痛が私を歪める。
「・・・どういう事?」
私は気がついてしまったんだ全てを。
「全部ね、埋まったんだ」
「埋まった?」
「バラバラだった世界平和というパズルが全部埋まったんだ」
釘のレイナとパズルのレイナが対となり神に生まれ変わる。
釘とパズル。世界が平和になるための鍵。
「そしたら、どうなったの?」
久美は私の思い通りに言葉を発する。
「弱者が死ねば世界が平和になるとわかったんだ、私が神となって創世をつくれば永遠の平和が手に入る。でもそれは私が望む世界ではないから、その世界を私の手で終わらせるしかないんだ」
青白い蛍光灯という神の光が優しく体を包み込む。
「何言ってるの?意味がわかんないよ」
「久美じゃわかんないよ、選ばれた人間じゃないから、久美は殺される側の人間だから」
「一緒に病院に行こうよ。私もついていくから、このままだとレイナが壊れちゃうよ。今からレイナのアパートに行くから、ね?」
「でもね、本当は久美が死ぬ姿は見たくないんだ。ううん、久美だけじゃない。本当は誰も死ぬのを望んではいないんだ、信じてくれるよね」
「うん、信じてる。ずっと信じてるから」
また久美を泣かしてしまった。これで何度目だろう。
「世界が平和にならないとわかったから。夢が叶わないとわかったから。もう私の生きていく意味がないから。だから私は死ぬ事にしたんだ。世界が平和になる最後の方法は、釘とパズルを終わらせる事、私とレイナが死ぬことだから」
「何言ってるのよバカ!死ぬなんて言わないでよ!バカ!」
「ごめんね、久美。愛してる」
私は携帯電話の電源を落とす。
”チャラーン”
間抜けな音を立て画面が真っ暗になる。