「・・・もしもし」
「久美だけど、元気?」
久美の声を聞くのは何日ぶりだろう。
「あんまり元気じゃないよ」
「そう・・・」
久美は言葉を詰まらせた。
”リンゴーン カーンコーン”
電話の向こう側では学校のチャイムが鳴っている。これも懐かしい音だ。
専門学校の短い思い出が甦る。
ファッション誌を見て皆とおしゃべりしたな。
昼休みになると久美とよく食事をしたな。久美は肉が食べられないから私も魚や野菜ばっかり食べていたな。学校の帰りにスターバックスに寄って話して。
「もう学校には来ないの?みんな心配してるよ」
久美の声は少し震えていた。慎重に言葉を選んでいるんだろう。
「学校は、もう行かないから」
チャイムの音色がしだいに小さくなる。
「どうして?まだ頑張れるよ。私も手伝うからさ、ね?」
「学校は、もう行かないから」
私は言葉を繰り返した。
「そうなんだ・・・そっか、そうなんだ、ごめん」
”ズキン ズキン”
頭痛が部屋の景色を歪める。
「久美が謝る事はないよ」
チャイムの音が完全に消えた。