”ピリリッ ピリリ ピリリ”
携帯電話の着信音で目が覚める。瞼が重く太陽の光がカーテン越しでも眩しいぐらいだ。
”ズキン ズキン”
鈍い頭痛がする。
体がダルいし左腕が少し痺れている。まるで自分の体じゃないみたいだ。
やがて携帯電話は鳴るのをやめた。
そして罪悪感という暴力が細い体を襲う。
チャオが死んだ時の何十倍もの罪悪感だ。
「私は・・・なんて事をしたんだ」
もう戻れない、自分の正体が醜い人間だと知ってしまったから。
平和のために人を殺すという事を肯定してしまったから。
世界の真理と倫理がわかってしまったから。
「どうしたのレイナちゃん?怖い夢でも見たの?」
「・・・うん、世界の最後を見たんだ」
私はレイナを抱いた。彼女は震えていた。
「大丈夫だよ、それは夢だから」
「でもね、平和があったんだ。世界の最後に平和があったんだよ」
”ピリリッ ピリリ ピリリ”
音を立てながらバイブする携帯電話を手に取る。
”森下久美”
「・・・久美」
私は心に決意をして電話に出た。