私は人間である、名前はレイナ。
それが唯一、残っているものだ。
2メートル上空の蛍光灯の弱々しい光に細い体は照らされている。
その細い体は息を吐く度に小刻みに震えている。
その震えを押さえようとゆっくりと息を吐き出すが体の震えは止まらなかった。
”トクン・・・トクン”
心臓が弱々しく鼓動している。
まだ生きている。

私は膝をかかえたまま朝日が昇るのを待っている。
夜が怖い・・・暗闇が怖い。
夜になると世界に私だけが残されたような感覚に陥る。
私には何も無いから、もう何も残ってないから。
作りかけの千鳥柄のワンピースが机の上に投げられたままになっている。
完成する事はなく月日をかけてホコリを被り、きっと捨てられるのだろう。

”ズキン・・ズキン・・ズキン・・ズキン”
痛い、痛い、イタイ。
激しい頭痛は全身の力を著しく消耗させていく。
この細い体は頭痛に蝕まれていくようだ。
心臓の音に合わせて頭痛もリズムを刻む。
大量に飲んだ頭痛薬もすでに効かなくなっている。
”ワタシハヒトリデ平気ナノ”
そろそろ限界か?
ホットミルクに砂糖をいれて飲みたいのだがあいにく冷蔵庫にはミルクがない。
いや、あることはあるのだが賞味期限が一ヶ月も過ぎているので飲む気にはなれない。
もう何日だろう、太陽を見ていないのは?
“タスケテ”
携帯電話のメールを打ってみるが送る相手がいない。
いや、送る相手が一人だけいるのだが彼女に心配をかけるのも嫌なのでそのまま携帯電話をパタンと折る。