「思い上がった話だ」

黙って聞いていた紅が口を開いた。

「どう逆立ちしようと、人は人以上のものにはなり得ぬ。神にも悪魔にもな。どんなに望んだ所で、人間は人間として足掻き続けるしかないのだ」

「ああ」

乙女がその言葉を引き継いだ。

「だから私達は、人間として強くなるしかない…そして、人間のまま、私達は異形者をも滅ぼす事が出来た…」

「何となく…わかります…」

ポツリと。

ななみちゃんが乙女の言葉に答える。

「人間である事を捨てるより…人間としての可能性を信じる…」

「小難しい事はわからん」

哲平が大きく息を吐いた。

「だが…」

その表情に。

懐かしい笑みが浮かんだ。

俺達と高校生活を送っていた時の、年相応の哲平の笑顔。

「人ならざる者に成り下がったと考えていた俺には…何よりの言葉だ」