「まぁ、気が向いたらまた飲ませてやるよ」
「ホントですか? やったぁ。んふふっ」
「そんなに気に入った?」
「はい。すごーく美味しいです。特に香りが良くて……ん~、しあわせ」
「そうか。そう言ってもらえると、朝から挽いてきた甲斐がある」
「えっ。まさか、毎朝挽いて持ってきてるんですか?」
「当たり前だ」
「とことんこだわってますね。そっか、だから美味しいんだ……」
私はカップに残った最後の一口を、名残惜しい気持ちで口に含んだ。
「飲んだら教室に行けよ。この部屋は施錠するし、俺はこれから職員室で朝礼だから」
「はい。ご馳走様でした。あ、カップは洗わなくて大丈夫ですか?」
「いいよ、後でやっとく。今日は授業の無い時間があるから」
「すみません、ありがとうございます。……良いな、授業無くて」
私たち生徒は一日中授業です。
「授業が無くてもいろいろ準備があるんだよ。子供は黙って勉強してろ」
「ぶーぶー」
「子ブタ、出てけ」
「はぁい。じゃ、失礼します」
私は一礼をして、準備室を後にした。



