まさかこんなヘビー級の話になるとは思ってなかったので、私は何て返せばいいか分からなかった。
コーヒーカップを包み込む両手に、思わず力が入る。
「はぁ。なんで俺、お前にこんな話してんの?──お前、この話も絶対誰にも言うなよ」
先生は頭を抱えて項垂れてしまった。
「ふふ、大丈夫ですよ先生。──ジキル博士の弱点、誰にも言ったりしませんっ」
茶化さないと、この予想以上に重苦しい空気を振り払うことが出来ない気がして、私は先生にわざとらしい笑顔で笑って見せた。
先生はまた、はぁ、と大きなため息をついて、眼鏡を外す。
「……あれ? その眼鏡って、もしかすると度が入ってない、ですよね?」
「目は悪くないからな」
「そうなんですね。じゃあ、本当にただの変装用なんだ。芸能人みたい!」
あはは! と私が笑うと、先生が眼鏡を外した目で私を睨む。
そして、その先生の瞳を見て私はドキッとした。
「えっ……」
絶句する私の顔が、先生の綺麗な色の瞳に映っている。
ブルーグレーの、瞳──。



