先生がいてくれるなら①【完】


少し遅れて準備室へ入ると、「扉、ちゃんと閉めろよ」と、ハイド氏な先生の声……。


はいはい、ハイド氏に逆らうと怖そうだから、ちゃんと閉めますよー。


「あ。コーヒーの良い香り……」


先生の手元を見ると、コーヒードリッパーにお湯を落としているところだった。


「インスタントじゃないんですね」

「俺コーヒー中毒だから、これじゃないと多分発狂する」


発狂って。


「ほんとは挽き立てで淹れたいけど、さすがに学校では時間が無くて無理だから。これでも妥協したほう」

「どんだけこだわるんですか」


私は呆れて笑う。


「豆を煎るところから」

「ふはっ、こだわりすぎです」

「……お前も飲む?」

「えっ、良いんですか?」

「言っとくけど、缶コーヒーなんかとは味が違うからな。子供には無理かも」


そう言って先生は意地悪く笑った。