少し遅れて準備室へ入ると、「扉、ちゃんと閉めろよ」と、ハイド氏な先生の声……。
はいはい、ハイド氏に逆らうと怖そうだから、ちゃんと閉めますよー。
「あ。コーヒーの良い香り……」
先生の手元を見ると、コーヒードリッパーにお湯を落としているところだった。
「インスタントじゃないんですね」
「俺コーヒー中毒だから、これじゃないと多分発狂する」
発狂って。
「ほんとは挽き立てで淹れたいけど、さすがに学校では時間が無くて無理だから。これでも妥協したほう」
「どんだけこだわるんですか」
私は呆れて笑う。
「豆を煎るところから」
「ふはっ、こだわりすぎです」
「……お前も飲む?」
「えっ、良いんですか?」
「言っとくけど、缶コーヒーなんかとは味が違うからな。子供には無理かも」
そう言って先生は意地悪く笑った。



