俺を不審に思って足早に立ち去ろうとする立花に、もう一度声を掛ける。


後ろから来た車にクラクションを鳴らされ、俺は思いきって助手席のドアを開けた。



立花は一瞬迷ったような表情をしたが、後ろの車が再びクラクションを鳴らした事で、後ろの車に小さく会釈をして俺の車に乗り込んだ。


後ろの車が良い仕事をしてくれたな。

ひとりほくそ笑む。


お礼の意味もたっぷり込めて、後ろの車に挨拶と謝罪のハザードランプを点滅させた。


「あの、……」


立花が恐る恐る声を出す。


「なんでこんな遅い時間にあんな所にいた?……具合でも悪かったのか?」

「え? あ、いえ、違います、兄のお見舞いで……」

「……ふーん。で、家、どこ?」

「は? えっと、宮原町です……。あ、あのっ」

「なに?」


「えっと、あの、……すみません、私、あなたがどなたか存じ上げないのですが……」



コイツ、まだ俺が誰か分かってないらしい。