──土砂降りの時間を電車内と駅構内でやり過ごし、立花の家へと一緒に歩いて向かっている。
もちろん、手を繋いで。
こうやって二人で歩いているとまるで恋人同士のような気分になるが、実際は全く違って、俺は教師で立花は生徒なのだ。
そこに、恋愛感情なんて持ち込んで良いわけが無い。
しかし、自分に何度言い聞かせても、どうしても立花を諦めることが出来ない自分に、俺自身が心底驚いている。
一緒に見た花火のことを嬉しそうに話す立花を、俺は心から愛おしいと思いながら相槌を打った。
「先生。今日は本当にありがとうございました。あの……とても楽しかったです」
家に前で、手を繋いだままこちらを仰ぎ見て少しはにかんだ表情の立花と、ここで別れなければいけない事を寂しく思いながら、「どういたしまして」と、できる限りの大人な対応をする。



