波が何度も打ち寄せてきて、大きな波が立花を連れ去ろうとする。
波なんかに渡すまいと手を引いて腕の中に閉じ込め、ギュッと立花を抱きしめた。
今、この瞬間だけは、俺のもの──。
この海辺にいるこの瞬間だけでいいから、俺だけのものでいてくれ──。
海風が立花の長い髪を揺らし、立花を抱きしめている俺の頬をそっとくすぐる。
打ち寄せる波の音が、どんどん早くなっていく俺の心音をかき消してくれた。
──好きだ、
……そう囁きかけたその瞬間、立花の片手が俺の背にそっと触れ、俺はハッと我に返った。
それは、絶対に口にしてはいけない言葉──。



