先生がいてくれるなら①【完】


頼んでいたコーヒーが二つと、ケーキひとつが運ばれて来た。


リョウさんの淹れたコーヒーを、俺は懐かしい思い出をたぐり寄せるように、口元に運ぶ。


芳醇な香りが口腔内から鼻腔へと抜け、あぁ、やはりまだまだリョウさんに勝つ事は出来ないなと実感する。



俺の隣で立花が幸せそうにケーキを頬張っていた。


どうやら店もコーヒーもケーキも、気に入ったらしい。



「俺が淹れるコーヒーとどっちが美味しい?」



意地悪な質問を投げかけると、立花はあたふたと答えを探して、「どっちも美味しい」と答えた。


ふーん。

俺が意地悪な質問をしている事には気がついているくせに、俺に忖度しないわけだ、なるほどね。


まぁ一応正解って事にしておいてやるか。


どっちが美味いかなんて聞いた俺の方がバカみたいに思えてきた。