「えっ……? 藤野先生!?」



「ははは! やっと分かった?」


信号が青に変わると、先生は眼鏡を外して前髪をグッと掻き上げ、車をなめらかに発進させた。



「あのっ、普段と、違いすぎます……っ!」



普段の学校での藤野先生は、ボサボサの髪にダサい眼鏡、ダラッとしたイケてない服装、加えて無表情──お世辞にもカッコイイとは言えない風貌だ。


なのに、今は……。




「家、どっち?」


驚きすぎて何も言えないうちに、家の近くまで来ていたらしい。


「あ、もうここで大丈夫です。あの、ありがとうございましたっ」


「ほんとお前、バカなの?こんな所で降ろすわけないだろ。家、どっち」



く、口悪っ!!


学校ではあんなに、なんて言うか……弱そうなのに!!!



「……二つ先の角を右に曲がった所です」

「あのね、女子高生が制服のままでこんな時間に一人で歩くとか、危なすぎだから」

「……うっ、すみません」


分かればよろしい、と頷いて、藤野先生は交差点を右折する。