寄せては引く波の音が何度も何度も聞こえて、抱きしめられている時間が一瞬では無い事を波が私にそっと教えてくれる。
私のドクンドクンと大きく早く脈打つ心音も、先生に聞こえないように波音がかき消してくれた。
このまま……
このまま、時が止まってしまえばいいのに──。
サンダルをぶら下げていない方の手をそっと先生の背中にそっと回すと、先生の身体がほんの少しピクリと動いた後、さっきと同じようにまた耳元でため息をつくのが聞こえた。
先生は腕の力を緩めて少し身体を離し、私と先生の間にはさっきまで無かった空間が出来る。
私は慌てて先生の背中から手を離して自分のした事が急に恥ずかしくなって俯いた。



