先生がいてくれるなら①【完】


先生はムッとした顔で「あんまりあっち行くな。服が濡れるし、危ない」と言って、繋いだ手にギュッと力を込めた。


「濡れたって大丈夫ですよ、すぐ乾きますから」


私がそう言うが早いか、さっきより大きな波が来て膝丈の私のスカートの裾を掠め、サラサラと引いていく。


その引きが思ったよりも強く、私は踏ん張ろうとしたけれど一瞬遅かったようで、海の方へ向かってバランスを崩しそうになると、先生が繋いだ手を強く引いて私を引き戻した。


ユキさんに借りた帽子が足下にふわりと落ちる。


少し引き戻すだけで大丈夫だったのに先生が思いっきり私の手を引っ張ったものだから、今度は逆に先生の方に身体が大きく傾いて、私は先生に抱き留められる形になってしまった。