「あともう一件行ったら俺の用事は終わりだから」
「はーい」
先生の最後の目的地は、本屋さんだった。
先生は私の手を引いて、どんどん奥へと進んでいく。
そこは、学術系のコーナーの一角。
私の手をぱっと離すと、先生は一冊の数学関係の本を手に取った。
なるほど。
私が数研に入ったから部の予算が増えたって言ってたもんね。
先生が数学の専門書を見ている間、私は隣のコーナーにある高校数学の本をパラパラと見ていた。
数学、苦手なんだよな~。
嫌いじゃないんだけど、急に難しくなって、どうやって攻略して良いか分からなくなっちゃってる。
内心、先生に申し訳ないと思いながら、全く分からん……と青チャートなんかをパラパラしてると。
「青チャ、買ってやろうか?」
先生がニヤニヤしながら声をかけてきた。
「えー。いりません。私、文系だし」
「数研部員には必須なんだけど」
「知りません、聞いた事ありません、数研部員じゃありませんっ」
「部員だろ」
ポカリと頭を叩かれた。
「あいたっ」
「じゃあ大サービスで、赤チャートを買ってやろう」
「い、いりません! て言うか、より難しくなってます! 絶対解けません!」
──そんな風に楽しく(?)買い物を済ませ、帰路につくのであった。



