先生がいてくれるなら①【完】


あぁ。散財。


ま、いっか。そろそろ服を買おうと思ってたし。


今日買うのは予定外だったけどね。



私は元の服に着替え、お姉さんにお店の服を渡す。


「こちらへどうぞ~」とレジへといざなうお姉さんの後を、とぼとぼと付いて行った。



バッグからお財布を出そうとすると、スッと目の前が暗くなる。


顔を上げると先生が私の前に立って、会計を始めた。



「え? え???」



ひとり狼狽える私をよそに、先生は支払いを済ませてしまった。


「どうもありがとうございました~」


ご機嫌なお姉さんから紙袋を受け取った先生は、茫然と立ち尽くす私の腕を引っ張って店を出る。


「あっ、あのっ、先生っ!?」

「なに」

「お、お代……」

「は?」

「え、だって、あの、ちゃんと自分で払います……」


私がお財布を出そうとするのを先生は制止して、私の手を握った。


「人が多くなってきたから、はぐれるなよ」

「……っ!」


心臓がまた、ドキドキと早鐘のように鳴り始める。