あーだこーだと言い合っている二人の声を耳に受け止めながら、完全に蚊帳の外となった俺はただ呆然と汗を掻いたグラスを見つめる。


「……」


…知らなかった。

みぃとしかそういう経験をしたことがなかった俺は、今の今まで本当に知らなかった。


会うたびにそういう事を求めるのが良くないってこと。何回も行為を重ねるのが不満を抱かせるってこと。


もしかしたら、みぃも今までずっと我慢してたんだろうか。

そういえば“やだ”って言って泣き出す時もあったし、終わった後はぐったりして全く動かないし、そのまま気を失ったように寝ちゃうし…。

思い返せば返すほど、さっき朋美さんが言っていた“独り善がり”というワードに引っ掛かるような部分が浮かんでくる。




「…あの…」


ジョッキの持ち手をぎゅっと握りながらぽつりと零した俺の声に二人が「ん?」「なに?」と会話を止めて反応する。



「普通って、どのくらいのペースでするもんだと思います?」

「するって、なに?えっちのこと?」


萩野ちゃんのドストレートな物言いにも何も反応できないくらい、内心焦ってた。そして動揺してた。


こくりと頷けば萩野ちゃんは顎に手を当て、うーんと数秒考えた後、




「一週間に一回?それでもちょっと多いかなぁ〜」



と、俺にとっては爆弾のような発言を落としてくれた。