ミスアンダスタンディング



思い立ってもなかなか行動に移せない私からしたら今日のこの決断は大いに勇気が要るものだった。


「……」


時刻は日付が変わる十五分前。
空大がバイトをしている居酒屋にこんな時間に私はひとりで出向いていた。

今日はラストまでだと言っていたからまだ中にいるはず。

店内の様子を見ようと入り口まで近づいたけれどガラス越しに見える店内には客どころか店員の姿すら見当たらない。



(もう閉店した…?いやでも、まだ電気は点いてるし…。)



いろんな事態が頭の中でぐるぐると回る。
もう少し近づいて中を覗こうと、一歩足を踏み出した。

――途端、目の前の入り口が微かな音を立てて開いたのだ。



(えっ、自動ドアだったの!?)


手動だと思い込んでいたそれが自動に開いたことに慌てふためく。咄嗟に一歩後ずさったけれど、時既に遅し。

ピロローンっと。来客を告げる機会音がシンと静まり返っている店内に鳴り響く。


その音を聞きつけたのか、キッチンの方から誰かが姿を現した。



「あーすみません。もうラストオーダー終わっちゃってて」


此方に歩いてきながらそう言葉を零す店員さんは、私と同じくらいの若い女の人だった。

長い髪を後ろで一つに結い、キリッとした瞳が特徴的なとても綺麗な人だった。