「未唯奈も正直そう思ったことあるんじゃない?」
「ないよ。あるわけない」
言葉が出なかったさっきとは打って変わり、ぴしゃりとそう断言する。
そんな質問、私からすればノーの一択でしかなかった。
空大以外の人と、なんて。
考えたこともないし、興味すら湧かない。
「今時珍しいくらい一途だよね、未唯奈って。すごいなぁ〜」
「…私は何もすごくなんてないよ」
どちらかと言えば、すごいと褒め称えられるのは空大の方だ。
それだけ彼には魅力がある。
空大だけで十分だと、もう何年も私にそう思わせるくらいの良さが彼にはある。
ただそれだけのこと。
とどのつまり、私は何もすごくなんかない。
「そんなに大好きな彼氏くんに会えない日が続くと、そりゃお弁当も手抜きになっちゃうよね〜」
「…」
別にいいじゃん。手抜きでも。
どうせ作ったって私しか食べないんだし。
ムッと口を尖らせてジトリとした眼差しを送っていると、メグはぷぷっと小さく噴き出した。
「そんな顔するなら、会いに行っちゃえばいいじゃん」
「…え?」
メグのいきなりの提案にきょとんと目を丸くする。
「だって会いたいときに会いに行けるのが“恋人の特権”ってやつでしょ?」
まるで悪戯っ子のようなその笑顔が、私の背中をトンッと押してくれたような気がした。


