「そういう質《たち》の悪い女、案外うじゃうじゃいるんだよ〜?」
「えぇ…。理解できない…」
「まぁそれはメグも同感だけど。世の中にはいろーんな人がいるからねぇ」
「…まぁそれはそうだけど…」
「もしかしたら未唯奈の彼氏くん、そういう女に唆《そそのか》されちゃってるかもよ?」
そんな、まさか。
有り得ないとは思いつつも、芸能人の不倫沙汰が連日ニュースで流れているこのご時世、ないとは言い切れないんじゃないかとも思ってしまう。
変な汗が手に滲む。
カラカラになった喉を潤そうと、ペットボトルを口につけた、その時。
「未唯奈たちってハジメテ同士だったよね?」
いきなり投げかけられた質問に、思わず口に含んだお茶を噴き出すところだった。
「…っな、に急に」
ゲホゲホと噎せ返りながら厳しい眼差しを向ける私とは対照的にメグは至って涼しい顔で言葉を続ける。
「いや〜、だったらもし誘惑されて断れなくてもちょっと仕方ないのかなぁって思って」
「…どういうこと?」
「だってお互いがお互いしか知らないんでしょ?ちょっと他の人と試してみたい、とかさぁ。そういう欲ってあるもんじゃない?男なら余計に」
「…」
私より洞察力に長けていて、私より恋愛経験が豊富なメグにそんなことを言われてしまったらもう何も言葉が出てこない。
少しは私もそう思っていたのかもしれない。
頭の片隅にちょこんとあったその不安は、空大との交際歴が長くなるにつれてまるで比例するように大きくなっていった。
なんの経験もなければ人目を惹くような魅力もない。
そんな私で、空大は満足してるのかなって。


