「我慢した方が萌えるぞ」
「んなことしなくても毎回萌えてる」
「…お前、言ってて恥ずくねえの?」
「…うるさい」
サラリと口を突いて出てきたけど、確かに今の発言はちょっと恥ずい。
「じゃあ今日は久々に彼女オフデー?」
「いや、この後会う」
「おいおい。全然我慢できてねえじゃん」
「前から約束してたんだから仕方ないだろ」
「空大くんは誘惑に勝てるのかねぇ」
「大丈夫だって。泊まんねえし」
つらっとした顔でそう言い切る俺に、陽平は頬杖を突きながら「ふーん?」と含みのあるような笑みを浮かべる。
「まぁ頑張れ」
「おー」
「変な方向に拗《こじ》れないことを祈っといてやるよ」
「…?」
なんだ。拗れるって。
その言葉に多少引っかかったものの、再びカツ丼を口に運び出した陽平に「おー」と適当な返事をしてから、俺も昼食を摂る事に集中した。


