『、ってぇ……』
あまりの痛さに悶絶していると、コンクリートに突いた手に何かが触れた。顔を顰めたまま視線を向けると、俺の手の近くに白いスマホが転がっている。
俺のスマホは黒だし、ポケットの中に入ってる。さっき奪おうとしていたあいつのスマホも黒だった。
じゃあこれって…誰のだ?
てか俺、落ちる前に何かとぶつかったような――…
ハッとして顔を上げれば、『おい空大、大丈夫かよ』と口々に声を発する友人たちの傍らで、気まずそうに立っている女の子が目に入った。
『あの…』
何か言いたそうに控えめに声を発したその子を見て、疑問が確信に変わっていく。
『…もしかして俺、ぶつかった?』
『…』
こくりと小さく頷いたのを確認してから、さっきの転がっていたスマホをバッと手に取る。無残にもバキバキに割れている液晶を見て、身体からサァーっと血の気が引いていく。
『これ、君の?』
『…うん』
『マジでごめん!弁償する!ってか怪我してねえ!?』
『ま、待って!』
慌てて立ち上がろうとした俺に駆け寄ってきたその子は、小さな手で俺の肩をぐっと押さえた。
『ゆっくり立った方がいいと思う』
『…』
『打ったところ、大丈夫?』
スマホを壊した張本人に怒るどころか心配してくるとか…。
どんだけ優しいんだよ、この子。
第一印象は、多分それだった。


