思い返してみれば、いつも俺からだった。
『ぎゃはは!この空大の寝顔、マジで傑作』
『うっせえな、早く消せって』
高校の時の俺は今よりもずっと幼かった。バイトを始めたことで少しは大人になった気でいたけど、今思えば本当にガキだったと思う。
いつもつるむのは男ばかり。
女の子と過ごすよりも男友達とバカな事をしている方が断然楽しいと思っていた俺に、恋愛なんて縁のないもんだった。
こんな風に階段でギャーギャーと騒ぐくらいには、どうしようもないガキだった。
『アイツにも送ってやろーっと』
『おい、マジでいい加減にしろよ。スマホ貸せ』
『ちょ、おま、引っ張んなって!』
スマホを奪い取ろうとした俺の手をそいつがパシンッと振り払う。想像していたよりも遥かに強かった衝撃に、上半身が後方にぐらりと傾いた。
――あ、やばい。
そう思った時には身体は浮遊感に襲われていた。
『きゃ…!』
『うぉっ』
ドンッと何かにぶつかりながら、冷たいコンクリートに腰を打ち付けるように着地。ドスンッ、ガシャンッ、と物騒な音が立て続けに響き渡った。
…まさかこの歳になって階段から落ちるとは。
二段くらいしか上がっていなかったから幸い大きな怪我には繋がらなかったものの、全体重が掛かった腰の痛さは尋常じゃなかった。


