(男性25才、会社員)

久しぶりにひどい風邪を引いて、病院に来た。

家の近くにあるこの病院は昔から苦手だった。

具体的に何かあったわけではないがどうしても苦手意識があった。

小さい頃は小児喘息で入院したこともあった。

その時の事を思い出すからなのかもしれない。

することもなく、熱も上がってきたのかぼっーと待合室を眺めていた。

意外に人が多いなと思った。

不思議に感じたのは患者の半分が病院の寝巻きを着ていたことだった。

おそらく入院患者なのだろうが、皆虚ろな表情で誰と話すでもなく座っていた。

程なく、私が呼ばれたので立ち上がると入院患者が一斉にこちらを向いた。

私はどきりとしたが、そのまま診察室に向かった。背中には入院患者たちの視線を感じながら。

診察が終わり、待合室に戻るとあれだけいた入院患者は誰も残っていなかった。

そして、会計の時に貼り紙でわかった。
 
この病院は昨年から入院を取りやめていることに。