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「姫様、本当に大丈夫ですか?」

何度もされる念押しに苦笑を浮かべる。

「大丈夫よ。誰もコレがタヤカウ姫だなんて思わないし」

眼鏡の三つ編み姿。

衣装も動きやすく庶民的な服装。

タヤカウの公女としての姿の時は、高さのあるヒールを履いているので、歩きやすい低い靴にすると、背の高さの印象も全く違う。

夕食の後、何度か図書館に通ったが、普通に学生に紛れて誰も気付かない。

「護身用になるもの、何か持って行ってくださいよ」

「それこそ、逆に怪しいんじゃないかしら」

学生で手ぶらも変なので、一応筆記用具などの入った小さな鞄は持っていくことにした。

ペンも使い方次第では身を護るための武器にもなるだろうし。

小腹がすいた時のための、つまめるお菓子も忍ばせておく。

母国から公女の近衛の護衛官であるハルヒは、部屋の前でそ知らぬふりで警備にあたっている。

ユナに侍従しているのはこの二人だけだ。

ちなみにサリとハルヒは夫婦だ。

タヤカウにいた時からの、数少ない心許せる者。

「では、行ってきます」

「いってらっしゃいませ」

仕方なしに見送ってくれる。

扉を開けて護衛のハルヒにも声をかける。

「行ってくるね」

「お気をつけて」


足取り軽く歩くユナ姿を見送った二人は笑みを交わす。

「姫様が楽しそうなのが、なによりです」